Wednesday, May 30, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・13

           

日本人のLDL-コレステロール値と死亡率・・2


 LDL-コレステロール値(LDL-C,mg/dl)と日本人の死亡率についての疫学調査結果が、大櫛陽一著「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田書店)に取り上げられていますので紹介します。
 一次予防としての結果です。

 既に、総コレステロール値と5年死亡率として、福島県郡山市と神奈川県伊勢原市の2市を統合したデータとして紹介しました調査に基づきます。

 今回も、2市を統合したデータとなっています。

 途中、転出し生死が不明になったり、調査開始から一年以内の死亡者は対象から外されています。

 五年間の追跡された人は、男性9540人、女性1万8942人でした。

 対象年齢の平均は、男性が65.5歳±10.0、女性では、62.6歳±10.8でした。

 その結果は、以下の如くです。

 LDL-Cが、120~159mg/dlで、男女いづれにあっても、5年死亡率はモットも低かったのです。

 一方、LDL-Cが119mg/dl以下になると、120~159mg/dlを基準として検討しますと5年死亡率は増加傾向となります。

 女性では、LDL-Cが119mg/dl以下になると有意差を持って、5年死亡率は上昇となりました。

 男性では、LDL-Cが、80~119mg/dl では、男性の集団数が増えれば有意差を示す可能性が高いレベルでした。

 しかし、80mg/dl未満では、統計的な有意差を示した5年死亡率の増加となりました。

 以上の結果から、男女共に、160mg/dlでは、LDL-Cは問題ないとなります

 大櫛グループによるコレステロール治療ガイドラインについては、「Dr.BEAUT/ソフィーリッチ」で、既に紹介しました。

 その診断基準によります、50歳以上では、男性がLDL-Cが180mg/dlまでを正常としています。

 女性は、190mg/dlまでを正常としています。

 逆に、男女共に、LDL-Cは、100mg/dl以下にしないこととあります

 つまり、LDL-Cが低値となる方が危険なのです。

 その大櫛グループ診断基準での血中総コレステロール値は、180mg/dl以下にしないこととあります。

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチは 「高コレステロール治療ガイドライン」を取り上げています)

 (楽天ブログ、ミクシイでは、本日は「ダイエットなどによる低コレステロールとなれば、何ゆえに、素肌美障害となるか」を取り上げています)

Tuesday, May 29, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・12

日本人のLDL-コレステロール値(LDLーC)と死亡率・・1


 日本動脈硬化学会は、従来の高脂血症の病名を「脂質異常症」と改め、その診療指針から「血中総コレステロール値」を、その基準を定め難いと削除しました(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」。

 そして、脂質異常症の診断基準は、従来どうりに、LDL-Cは、≧140mg/dl, HDLーCは,<40mg/dl, トリグリセライド(TG)は,≧150mg/dlとしています。

 HDL-CとTGは、メタボリックシンドローム(代謝症候群、メタボリック症候群)と同様の基準となっています。

 しかしながら、メタボリックシンドロームには、LDL-Cは診断基準に含まれていません。

 ここで問題は、血中総コレステロール値に代わって、前面に登場したLDL-Cが、≧140mg/dlが適切であるかどうかが問題となります。

 アメリカのNCEP ATPIIIと言うコレステロール教育プログラムでは、LDL-Cは≧160mg/dlと、心筋梗塞が我が国より多発するにもかかわらず、コレステロール値と同様、我が国より高値の基準となっています。

 結局、我が国では、「脂質異常症」と病名は変わっても、心は、血中総コレステロール値は、220mg/dlにあるのです。

 そのことは、「日本動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」(協和企画)のページ13にありますように、「血中総コレステロール値220mg/dlを採用し、この値に相当するLDL-C140mg/dlを高LDL-C血症の基準と定めた」のです。

 そこで、大櫛陽一著「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版)に、如何様なLDL-Cとコメントされているか検討をして見ます。

 次回とします。

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチには、本日は「我が国での積極的なスタチン系薬剤投与による心血管死予防」について紹介しています)

 (楽天ブログ、ミクシィには、本日は「ダイエットや栄養アンバランス、精神不安などによる低コレステロール血症のローコレステアラームIによる改善」を取り上げています)

Monday, May 28, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・11


何故に、高脂血症の病名は消え、
血中コレステロール値は診断基準から削除されたか・・9・・

日本の血中コレステロール値と死亡率・・6


 日本動脈硬化学会血中コレステロールによる動脈硬化性疾患の診療上の基準とされてきた、1997年の「高脂血症診療ガイドライン」や2002年の「動脈性疾患診療ガイドライン」にしたがって、一次予防、二次予防として、血中コレステロールの値のみならず、LDL-コレステロールや中性脂肪を低下させる臨床試験が行われてります。

 その結果が、今回の日本動脈硬化学会による「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」(協和企画)に掲載されています。

 二回にわたって、本日及び次回の「Dr.BEAUT・ソフィーリッチ」の「高コレステロール治療ガイドライン」で、そのデータを取り上げます。

 一次予防にあっても、二次予防にあっても、肝心の心血管死亡の低下率%に有効性を認めていません。

 また、その他の疾患を含めた総死亡率%の低下に意味なしとなっています

 つまり、スタチン系薬剤を投与する意味、「コストー有益性」があるとはいえないのです。

 それでは、今回の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」の病名を「脂質異常症』と改め、「コレステロール値」を削除した『診療指針』で、意味ある改定が成されたかとなります。

 今までの二度の改定が、自らの出版本「日本動脈性疾患予防ガイドライン2007年版」のページ40~43に取り上げているような結果を踏まえた改定となっていなければならないと思うのです。

 しかしながら、前回の改定で、既に、血中コレステロール値の基準は、定め難く、参考値としています。

 それを今回は、『コレステロール値』は、参考値としても削除して『病名』変更による改定となったのです。

 ところが、実際の改定は、コレステロールを除いた他のLDL-コレステロール値、HDL-コレステロール値及び中性脂肪値(トリグリセライド値)は同じ基準なのです。

 そして、一次予防には、検査値が異常となったら、即、スタチン系薬剤投与などの治療ではなく、「まず、生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する」と『治療の方針の原則』に付け加えられ他のです。

 また、二次予防では、「生活習慣の改善と共に、薬物治療を考慮する」となったのです。

 しかしながら、コレステロール値を削除して、LDL-コレステロール値を据え置いて、実態は変わっていないと言えます。

 前回述べましたように、日本動脈硬化学会だけによる改定では、「心血管死亡」のみならず、ガン死等も含めた「総死亡」の抑制とはならない“オタク思考”の改定ばかりとなりかねないと思えてなりませんが、皆さん如何でしょう。

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチでは「我が国の代表的なスタチン系薬剤による大規模臨床試験・・一次予防」について書いています)

 (楽天ブログ、ミクシィには「低コレステロールとなる低栄養及び異栄養症・・精神不安」について書いています)

Thursday, May 24, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・10

何故に、高脂血症の病名は消え、

血中コレステロール値は診断基準から削除されたか・・8・・

日本の血中コレステロール値と死亡率・・5




 日本動脈硬化学会による編集本(2007年4月)・「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」にあっての、今回の血中総コレステロール(TC)値を削除して、LDL-C(LDL-コレステロール)値を定めた理由は、次のように記されています(pp.12~13)

  「TC値の上昇に伴ない、冠動脈疾患発症率・死亡率は連続的に上昇し、明確な閾値は認められないので、高TC血症の境界を設定することは困難と思われる」からなのだそうです。

 それならば、今までは、「何故に、国民的な “高コレステロール血症” の「基準値」を、「冠動脈疾患」が、著しく多い、欧米より低いTC値220mg/dlと定めてきたのか」と問いたくもなります。

 次に、「高LDL-C血症」の基準値を≧140mg/dlと定めたかは、以下の如くとなっています。

 「米国のガイドラインであるNCEPにおいては、高コレステロール血症の基準をMRFITでのTC値と冠動脈疾患による死亡率の関係から、相対危険度がTC値240mg/dlのリスクに比べ2倍となる240mg/dlとしている。

 以上のことを考慮して、冠動脈疾患の予防と治療の立場から見た日本人のスクリーニング基準値としてNIPPON DATA80で示された相対危険度がTC値160~179mg/dlに対して、約1.5倍となるTC値220mg/dlを採用し、この値に相当するLDL-C値140mg/dlを高LDL-C血症の基準値と定めた。」のです。

 これでは、高TC値の境界を決め難いと削除しておきながら、LDL-C値を決めるに当たって、TC値220mg/dl採用しています

 これでは、「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版」のTC値220mg/dl表示は、今や、ガン死などの総死亡率の上昇に、表示するのは耐え難くなって、削除し、実質的には、LDL-Cは据え置いた「脂質異常症」の誕生と言われかねません。

 私は、「血中脂質値」と「総死亡の危険」に加えて、同じ動脈硬化性疾患の予防を目的とする「メタボリックシンドローム(代謝症候群、メタボリック症候群》」との整合性ある統一基準とすべきだと思います

 また、この時代、色々、勘ぐられないように、「メタボリックシンドローム」の診断基準を決めたように、関連領域の学会の人達による合同委員会でも編成して決めた方が健全と思うのですが。

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチでは、本日「高コレステロール治療のガイドライン・・8」です)

 (楽天ブログ、ミクシィでは、本日「低コレステロール値の原因となる疾患・・ダイエット & 栄養アンバランスなどによる低栄養や異栄養症」です)

Wednesday, May 23, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・9

何故に、高脂血症の病名は消え、
血中コレステロール値は診断基準から削除されたか・・7・・

日本の血中総コレステロール値と死亡率・・4


 大櫛陽一著「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版、2006年、5月)のpp.35~36の「総コレステロールを下げると死亡率が上がる日本人」のチャプターに、既に、取り上げましたように、神奈川県伊勢原市と福島県郡山市のデータの他に、大阪の八尾市と守口市、福井市、茨城県での追跡調査で、低コレステロールに伴なう死亡率の増加が、同様に認められると紹介されています。

 浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」(角川書店、2006年、9月)には、前回紹介の「NIPPONN研究」のデータの他に、八尾市、茨城県の大規模調査が、JーLIT研究と共に、pp.39~81かけて取り上げられています。

 また、p.81~88にかけては、韓国人男性、日系アメリカ人男性、オランダの高齢者を対象とした調査による「低コレステロール値」と「ガン死などによる総死亡の増加」を取り上げています。

 八尾市のデータでは、血中総コレステロール値が、240~279mg/dlで、総死亡の危険度は最低となり、男女合計を見ると160mg/dl以下では、1.6倍の総死亡危険度の増加となっていました。

 但し、コレステロール値が280mg/dl以上となれば、男女合計の総死亡危険度は、1.6倍と、ほぼ低下の場合と同程度の増加となっていました。

 ガン死では、血中総コレステロール値が、280mg/dl以上で、死亡危険度は最低となり、160mg/dl以下となれば、男女合計では、1.8倍ほどのガン死増加となっているのです。

 男性でのガン死増加は、160mg/dl以下では2.7倍とあります。

 但し、女性でのガン死増加は、認められていませんでした

 次に、茨城県で大規模調査では、次のようでした。

 コレステロール値が240mg/dl以上を基準として、コレステロール値低下に伴なって、心筋梗塞死は、僅かな減少傾向、脳卒中は、僅かな増加傾向にありました。

 しかし、総死亡率は、240mg/dl以上に対して、160mg/dl以下では二倍の増加となっています。

 ガン死では、二倍以上の増加が認められてたのです。

 以上から、低コレステロールに伴なって、総死亡の増加、ガン死の増加は、海外も含めて、事実だと言えます

 こうした調査での死亡率やガン死の増加は、調査期間が5,6年以上で、既に認められると言うことです

 以上のような「低コレコレステロールに伴なうガン死を含む総脂肪の増加」の事実は、今回の日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」、「脂質異常症」への病名変更と診断基準からの「血中コレステロール値」の削除につながったと思います

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチでは、本日「高コレステロール治療のガイドライン・・7」を取り上げています)

 (楽天ブログ、ミクシィでは、本日は「低コレステロール血症の原因となる疾患・・肝機能障害・・5」です)

Tuesday, May 22, 2007

低コレステロール値を補うニードに答える・・8

何故に、高脂血症の病名が消え、

血中コレステロール値は診断基準から削除されたか・・6・・

日本の血中総コレステロール値と死亡率・・3



 前回取り上げました日本動脈学会が、根拠的データとする「NIPPON DATA]は、浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」(角川書店、2006年9月)によると「NIPPON研究」として紹介されています(pp.43~46)

 前回紹介しましたような2007年度の論文が出る前で、14年間の追跡調査結果です。

 その紹介は以下の如くでした。

 まず、コレステロール値と死亡危険度が示されています。

 死亡危険度がモットも低かったのは、男女共に、血中総コレステロール値が240~260mg/dlだったのです。

 取り分け、女性では、コレステロール値が160以下の人達で、二倍以上に死亡危険度は増しました

 更年期以後の女性で、低コレステロール血症の人は、要注意と言うことです。

 男性では、1.5倍ほどで、女性よりは低めでした。

  死亡危険のみならず、14年後の「自立率」も、死亡危険度が最低だったコレステロール値が240~260mg/dlの人達で、モットも多かったのです。

 ここで、自立率とは14年後に生きて、人の世話にはならずに身の回りは自分で出来る人の割合を示します。

 つまりは、心身共に元気度のがよかったと言うことになります。

 次に、ガン死と血中コレステロール値についての結果です。

 低コレステロールとガン死については、逆に、男性で、その危険は増加していました。

 ガン死は、コレステロール値が増せば、低下するとの事実は、既に、J-LIT研究の時に説明しました。

 このNIPPONN研究では、血中コレステロール値240mg/dlを1として、その倍率は以下の如くでした。

 男性では、コレステロール値が160mg/dl以下では、240mg/dlに比して四倍以上のガン死の増加となっていました。

 女性では、二倍を越えるぐらいでしたが男女合計で三倍となっていました。

 以上より、日本動脈硬化学会が脂質値を決めるために重要視するNIPPON DATA(NIPPON 研究)にあって、老化に伴なった「自立度」、心筋梗塞死を含む全体の「死亡危険度」、「ガン死」は、血中コレステロール値が「240~259mg/dl]で最低を示し、「260mg/dl]の「高コレステロール」より、「低コレステロール」の方が、全体の「死亡危険度」、「ガン死危険度」にあっても高いとの結果だったのです。

コレでは、「血中総コレステロール値」を診療、診断基準から削除しなければならない結果と言わざる負えません。

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチでの本日のテーマは「高コレステロール治療のガイドライン・・6」です)
 (楽天ブログ、ミクシィでは 「低コレステロール血症の原因となる疾患・・肝機能障害・・4」です)

Monday, May 21, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・7

何故に、高脂血症の病名は消え、

血中総コレステロール値は診断基準から削除されたか・・5・・

日本の血中コレステロール値と死亡率・・2



 今回から、浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」(角川書店、2006年9月)から、日本人を対象とした総コレステロール値と死亡率のお話に移ります。

 先ず、「NIPPON研究」(NIPPON DATA;National Integrated Project for Prospective Obseravation of Non-communicable  Disease And its Trends in the Age)と言われる1980年に開始された、我が国の対象者が全国の300地区からのランダムサンプルで選んで、厚労省による国民的なプロジェクトによる追跡調査を行っている研究からの検討です。

 一万人近い人達の調査追跡で、現在も、5年おきに65歳以上の生存者に調査が行われています。

 今回の日本動脈硬化学会による、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」で、血中コレステロール値を削除した理由となるデータは、この研究によっていると言えます。

 そのガイドラインに次のような記載があります(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007版、日本動脈硬化学会編、協和企画、2007年4月)。

 「NIPPONN DATA80にて男女合計のTC(血中総コレステロール値)160~179mg/dlの群に対して200~219mg/dlの群では冠動脈疾患死亡の相対危険度が1.4倍、220~239mg/dlでは1.8倍になる」とあります。


 しかし、ツズイテ、「TC値の上昇に伴ない、冠動脈疾患発症率・死亡率は連続的に上昇し、明確な閾値は認められないので,高TC血症の境界を設定することは困難と思われる。」となったからなのです。

 その根拠となった論文は、OKAMURA T らによる「for the NIPPONN DATA80 research group : The relation between serum total cholesterol and all-cause or cause-specific mortality in a 17.3-year study of a Japanese cohort. Atherosclerosis,190,216-223,2007」。

 しかし、動脈硬化学会によるガイドラインには、ガン、脳出血、感染症、事故・自殺などを含めた総死亡とコレステロール値やLDLコレステロール値についての検討がなされて決められたものではなく、あくまでも、「動脈硬化性疾患予防としてのガイドライン2007年版」だとの認識が必要です。

 一般の人達が、そうしたガイドラインだとわかるような情報発信をする必要があると思います。

 そこで、浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」の「NIPPONN DATA」の「NIPPONN研究」紹介の解説に移ることにします。

 (楽天ブログ、ミクシィは、本日「低コレステロール血症の原因となる疾患・・5・・肝機能障害・・3」を取り上げています)

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチに、本日は「高コレステロール治療ガイドライン・・5」を取り上げています)

Sunday, May 20, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・6

何故に、高脂血症の病名は消え、

血中総コレステロール値は診断基準から削除されたか・・4・・

日本の血中総コレステロール値と死亡率・・1



 我が国にも、血中コレステロール値が下がるとガン、感染症、事故・自殺等による死亡率が上がるとの報告は沢山あります。

 前回に続いて、大櫛陽一著「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版、2006年5月)に紹介してある神奈川県伊勢原市(人工10万人)と福島県郡山市(人口30万人)を対象とした五年間にわたる老人基本検診受診者の調査結果です(pp.35~36)。

 一年以内の死亡者は除いてあります。

 また、両市でのベースラインでのガン検診の異常率には差が無かったとのことです。

 それ故、「もともとガンでコレステロール低かった」との指摘を排除するためす

 転出したりしてフォロー不能になったり、一年以内の死亡者を除いて、追跡可能だったのは、男性9540人、女性1万8942人でした 平均年令は男性65.5歳、女性62.6歳でした。

 その結果は以下の如くです。

 伊勢原市と郡山市の両市を統合した男女別々の「血中総コレステロール値と五年死亡率」として整理です。

 合計で、2万8482人のまとめとなります。

 男女共に、血中総コレステロール値220~239mg/dlで死亡率は最も低かったのです

 そして、総コレステロール値が200~219mg/dl以下になると死亡率は上がり、160~179mg/dl以下になると男女とも、統計的な有意差を持つほどに、五年死亡率は上がってしまいます

 血中総コレステロール値が179㎎/dl以下になると低下すればするほど五年死亡率は上昇したのです。

 しかも、日本動脈硬化学会が基準値としていた220mg/dl以下で、死亡率が上がってしまう結果だった事を示しています。

 一方、血中総コレステロール値が240mg/dl以上になっても死亡率は上昇しました。

 しかしながら、男女共に、最低死亡率だった220~239mg/dlに比して、有意差ある死亡率上昇とはなっていませんでした。

 つまり、血中総コレステロール値低下で死亡率が上がるとの結果は、前回紹介しました、日系ハワイ人男性での結果と総コレステロール値210~239md/dlで一番死亡率が低かったとの一致すると判ります。

 また、p.108には、白崎昭一郎の研究論文として、福井市男性3万7379人の五年間の追跡調査として5年死亡率を示しています。

 その結果では、ガン死は、血中総コレステロール値が250mg/dlで最低となり、コレステロール値が下がれば下がるほど増すとの結果でした

 また、脳血管死、その他の死因にあっても、ガン死と同様な傾向でした。

 心疾患死亡は、221~250mg/dlのコレステロール値で最低を示し、250md/dl以上では上昇でした。

 しかし、心血管死の上昇にあっても、220mg/dl以下で死亡率は上昇傾向を示し、130mg/dl以下になると250mg/dl以上の死亡率以上の死亡率増加を示しています。

 この福井市の結果では、血中総コレステロール値は、「低ければ低いほど危険」といえるものです。

 次回は、浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」(角川書店、2006年9月)より、日本人対象の血中総コレステロール値と死亡率についての成績を紹介したいと思います。

 (楽天ブログ、ミクシィに、本日は「低コレステロール血症の原因となる疾患・・4」を書いています)

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチに、本日は「高コレステロール治療ガイドライン・・4」を書いています)  

Thursday, May 17, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・5

            何故に、高脂血症の病名は消え、
    血中総コレステロール値は診断基準から削除されたか・・3・・


       米国人と日系ハワイ人男性のコレステロール値と死亡率

 MRFITといわれる米国人男性35万以上(35~57歳)を対象とした総コレステロール値と死亡との関係を観察した疫学調査があります。
 
 12年間も追跡して、2万五千人ほどの死亡を観察しています。

 もう一つ、米国人の日系ハワイ男性で8千人近い人達を血中コレステロール値と死亡を対象として、18~21年追跡して、2千人以上の死亡を観察した疫学調査があります。

 それぞれの結果を概観したいと思います。

 話題の大櫛陽一著「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版、2006年)のpp.105~109に上手くまとめてあります。

 その本を参考にしてお話します。

 MFRITです。

 心血管系疾患での総コレステロールレベルとその死亡リスクでは、コレステロール値が240mg/d(以後・mg/dlは省略)l以上で上昇して、160にかけて死亡リスクは減少しました

 それに、ガン死とその他、感染症などでの死亡を追加しますと死亡率は様相は穏やかとはいえません。

 つまり、ガン死は240以上で減少して199以下で上昇に転じ、160以下では1.3倍の増加となりました

 その他の感染症、事故・自殺、脳出血などによる死亡にあっては、やはり、199以下で上昇に転じ、160以下では1.6倍以上の増加となったのです

 その結果として、全体の相対死亡率は、コレステロール値200~239を基準とすると1.2倍ほど増すとなります。

 次に、日系ハワイ人男性のデータはつぎのようです。

 冠動脈疾患、つまり、心筋梗塞死は、コレステロール値が230mg/dl(以後mg/dlは省略)以下ではほぼ横ばいでした。

 ガン死は、コレステロール値が270に比して、180以下では二倍以上の死亡率となりました。

 そして、冠動脈疾患、ガン、事故、その他の原因による総死亡率は、死亡が最低となる210~239に比して、180以下では1.3倍ほどの増加となったのです

 また、180以下でのガン死は冠動脈心疾患死に比して、3.8倍ほど多いのです

 つまり、血中コレステロール値が180以下の低コレステロール値のよる死亡の方が、総死亡で判定すると危険が高いということです。

 この結果は、既に取り上げました、我が国のJ-LIT研究と同様の傾向を示していると判ります

 これでは、低コレステロールの意味を問い直す必要があるのは当然と言えます

 その他の国内調査についても、次回取り上げましょう。

 (楽天ブログ、ミクシィに、本日は「低コレステロール血症の原因となる疾患・・3」を書いています)

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチに、本日は「高コレステロール治療ガイドライン・・3」を書いています)

 

Wednesday, May 16, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・4

              何故に、高脂血症の病名は消え、
     血中総コレステロール値は診断基準から削除されたか・・3・・

                  日本人の血中コレステロール値と死亡率

 我が国は、心臓病死は、前述しました如くに少ないのにもかかわらず基準値としての正常範囲を心臓病の多い西欧が240mg/dlに対して、220mg/dlと低く定めていました

 2004年の血中総コレステロール値が220~239mg/dlの範囲にある人は、男性で、14.9%、女性で17.4%に及びます

 つまり、コレステロール低下薬の対象が増えることになるのです。

 しかしながら、JーLIT研究では、年間千人当たりの総死亡率は220~239mg/dlで最低であり、200~259mg/dlの範囲で、死亡相対危険度では変わりはありません。

 死亡相対危険度が増すのは、260mg/dl以上からなのです。

 逆に、血中総コレステロール値が200mg/dl以下で死亡危険度は増し、180mg/dl以下になると最低の相対危険度を示した220~239md/dl比して2.7倍も増したのです。

 ガン死は、2.5倍も増えたのです

 肝心の心筋梗塞梗塞死は血中総コレステロール値が200~240mg/dlでは、有意差のあるような増減は認められてませんでした。

 こうした傾向は、本日の楽天ブログで取り上げましたNIPPON研究を始めとする国内各地域での調査でも認められています。

 以上より、ガン、心臓病も含めた総死亡率から判断すると、血中コレステロール値の高値による危険は260mg/dl以上となると判ります。

 一方、低値の血中コレステロール値の危険は、200md/dl以下で、取り分け、180mg/dl以下では有意の危険だと明らかです。

 既に、Dr.BEAUT・ソフィーリッチの 「低コレ & ローコレ日記」に取り上げましたように我が国の低コレステロールを示す人達の示す%は、高コレステロールを示す人達の示す%よりハルカニ多いのです。

 (楽天ブログ、ミクシに「低コレステロール血症の原因となる疾患・・2」を書いています)

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチに「高コレステロール治療ガイドライン・・2」を書いています)
      

Tuesday, May 15, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・3

          何故に、高脂血症の病名は消え、血中コレステロール値は
                 診療指針から削除されたか・・2・・
                  血中コレステロール値と死亡率

 血中総コレステロール値については、現在、我が国では、事実誤認に基づくと言える国民的な“高コレステロール恐怖症”と言って良い状況にあります。

 我が国の心筋梗塞による死亡は、欧米に比して、1/2~1/10に過ぎません

 それなのに、“赤ワインは心臓病に良い”とフランスのように5倍ほど多いような国のワイン販売商法のキャッチコピィーといってよいような言葉に群がって、 “アルコールを飲む口実”として利用されているように思えてきます。

 現在、日本人の心疾患の死亡率は1970年以後に入って低下傾向にあります。

 脳血管疾患は1965年前後にかけてピークとなり、その後は急速に減り、今日でも低下傾向となっています。

 一方、日本人の食生活は西欧化が進んで、1946年(昭和21年)から2004年(平成16年)にかけての58年間で、脂質摂取量は、14.7グラムから54.1グラムに増えています(3.7倍)。

 国民的な総コレステロール値についての調査は、1997年(平成9年)から2004年(平成16年)にかけて報告されています。

 男性の平均では、198.6mg/dlから、199.1mg/dl

 女性の平均では、205.1mg/dlから207.1mg/dl

 つまり、特別に高コレステロール血症の人は増加しているとはいえません

 また、血中総コレステロール値が、欧米の正常範囲を超える240mg/dl以上の推移では、男性では1997年が10.5%、2004年では12.1%です。

 女性では、1997年が17.4%、2004年では17.8%でした

 以上の事実は、脂質摂取量の増加が、心疾患死を増やしているとは言えず、血中コレステロール値は、十分な期間のデータとはいえませんが、変わっているとはいえません

 一日のコレステロール必要量の内、食物から摂取する依存は20%に過ぎませんから、脂質摂取量はほとんど影響しないのも当然です。

 
 (楽天ブログ、ミクシに「低コレステロール血症の原因となる疾患・・1」を書いています)

 (Dr.BEAUT・ソフィーリッチに「高コレステロール治療ガイドライン・・1」を書いています)

Tuesday, May 08, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・2

何故に、高脂血症の病名は消え、
血中コレステロール値は診療指針から削除されたか・・1


 アメリカの国立心臓血管研究所によるアメリカ国民の36万人を越える人達を対象とした疫学研究MRFIT(Multiple Risk Factor Intervention Trial)(1986年に論文発表)によって、血中コレステロール値が192mg/dl以下で、ガン死、脳出血、感染症、外傷その他による死亡が増すとの事実は報告されていました。

 そして、我が国でも、そうした疫学的事実は研究され、発表されていました。

 しかし、“高コレステロール病”の前に、そうした「低コレステロールの危険」と言う事実は、あまり、周知されることなく、今日に至っているとも言えます。

 それでも、今回、日本動脈硬化学会も、改めざる負えなくなったというのが現実ですが、マダマダ、“高コレステロール神話”は、あまり、積極的に改めようとの姿勢が乏しいのが現実です。

 我が国の日本動脈硬化学会は、既に、1997年に定められた「高脂血症診断ガイドライン」を改定して、「動脈硬化性疾患診断ガイドライン2002年版」を発表しています。

 そこで、既に、血中コレステロール値の基準は定め難く、コレステロール値は参考値に過ぎなくなっていました。

 あまり、目立つような周知が為されていませんでした。

 そして、今日でも、国民的な“高コレステロール恐怖症”は続いていると言えます。

 しかしながら、国民病的に“高コレステロール病”恐怖症が流布しているにしては、今回の病名“高脂血症”が改名され、「脂質異常症」となり、診療基準は改められ、“コレステロール値”が排除されるようなドラスチックな変化にしては、静かな情報発信となっているのが現状と思います。

 今回の動脈硬化学会の変化は、一つには、コレステロールと動脈硬化との関係が、血中コレステロール値で語れるほど単純ではなくなったことが、先ず、上げられます

 もう一つは、2002年に発表された我が国のJ-LIT(Japan Lipid Intervention Trial)と呼ぶ我が国、日本での全国5万人以上の“高脂血症患者(血中コレステロール値220mg/dl以上の患者)”を6年間に渡って、スタチン系コレステロール低下薬の効用を追跡した試験で、低コレステロールに伴なった心筋梗塞死の増加のみならず、ガン死、脳出血死、感染症死、自殺・事故死などが増加して、総死亡率が2.7倍ほど増えてしまったとの結果にあると思います。

 ツズケテ、J-LIT研究や動脈硬化の病態について取り上げたいと思います。

 (楽天ブログ「低コレステロールを上げる元祖」Dr.BEAUT・ソフィーリッチのブログ「低コレ & ローコレ日記」に関連内容を取り上げています)

Monday, May 07, 2007

低コレステロールを補うニードに答える・・1

      

高コレステロールより低コレステロールが怖い


 我が国では、国民的な“高コレステロール”恐怖症といって良いぐらいの状況にあります。

 そして、治療薬や医薬品のみならず、血中コレステロール値を下げることを売り物とする特保商品、サプリメントや健康食品などの百花繚乱状態に在ると言えます。

 しかしながら、“高コレステロール病”の代名詞と言って良いような、長年用いられてきた病名・「高脂血症」は、この4月25日の日本動脈硬化学会によって消滅、改名して、新たに「脂質異常症」と言う病名の誕生となりました。

  そして、新たな診断指針が設定されました。

 今度は、その診療指針から、血中コレステロール値は削除されてしまったのです

 つまり、コレステロール値の診断、治療としての意味を失ってしまったのです

 そうなると、血中コレステロールを下げる意味や条件は、どうなるかとなります。

 同じ、動脈硬化性疾患をターゲットとするメタボリックシンドローム(メタボリック症候群、代謝症候群)の診断基準には、始めから、血中コレステロール値が含まれていない事実を考えれば、コレステロール値が有効な検査値でないことは、当然ともいえます。

 高コレステロール値が問題となるのは、家族性高コレステロール血症などの特別の病気に限られたのです。

 楽天ブログ「低コレステロールを上げる元祖」などに、既に、取り上げていますように、高コレステロール血症で、動脈硬化性疾患死のみならず、ガン、脳出血、感染症、事故・自殺死など全ての死亡原因を含めた死亡者数が上がるのは血中コレステロール値が280mg/dl以上になってからなのです。

 しかし、血中コレステロール値が180mg/dl以下の低コレステロールによる死亡者数の方が多いのが現実です。

 私たちの生命維持に、コレステロールは必要不可欠の成分なのです。

 動脈硬化予防には、単純な血中コレステロール値だけでは何ともならない新事実が明らかになって来ました。

 今や、新たな初期の動脈硬化発生過程での予防対策が求められるのです。

 メタボリックシンドロームについては、Dr.BEAUT・ソフィーリッチの「低コレ & ローコレ日記」の前のブログで取り上げてきましたので、興味のある人は参考にして下さい。

 ここでは、低コレステロールを改善する必要性を「俯瞰」的に取り上げたいと思います。

 (楽天ブログ「低コレステロールを上げる元祖」Dr.BEAUT・ソフィーリッチのブログ 「低コレ & ローコレ日記」に関連内容を取り上げています)

Sunday, May 06, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・6

 この休み中のNHKBS2で、たまたま、五木寛之訪ねる仏教番組を観ました。

 中国・南宋禅の元祖となっている六祖慧能を取り上げていました。

 慧能は、文字の読み書きも出来ませんでしたが、仲間に書いてもらった「詩」によって六祖となったことで知られた禅宗の再興僧です。

 浄土宗祖の法然上人とその影響を受けた一休宗純の浄・禅兼帯の生活文化思想の背景となっているのが、慧能の「頓悟直路」、「見性成仏」だったと私は思っています。

 クマラジュウの「煩悩是道場」、「直心是道場」の思想は、「五欲煩悩」にあって「この市中こそ道場とならざるはなし」とつながります。

 番組にあって、「自分を見つめる心(soul)、人による心」を説き、慧能の言葉として、「外から見える形にこだわると、たちまち、心が乱れる」とありました。

 達磨禅以来150年を経ての慧能による「形にこだわるな」の禅の変法となりました。

 また、「書くことによって、心を空にする」大切さを説きました。

農作業、掃除など何でもよいのです。

 私は、オタピー茶の湯としては、且坐喫茶によって「形にこだわることなく」、「天と地の界にしっかりと坐す」れば、「本来無一物」の「心」からの「俯瞰」の境地となるのです。

 オタピー茶の湯では、日常茶飯の生活の場にあっての「市中の山居」での「俯瞰」は「直心是道場」での「頓悟直路」の「心」に入るのです。

 日常茶飯にあっての「心と体の共鳴」なのです。

 その上で、「ハイカルチャーとPOP-Kitschーサブカルチャーとの界を紛らかし」が求められるのです。

Saturday, May 05, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・5

 オタピー茶の湯は、日常茶飯の俯瞰思考を大切にしていると述べて来ました。

 私にとって、喫茶、茶の湯の時が、俯瞰思考に最適なのです。

 ポルトガルの宣教師・ロドリゲスが、日本教会史に、茶室を「市中の山居」と記しています。

 私は、実に、当を得た表現だと思います。

 江戸初期の時代の茶室の持つ意味について、外国人による優れた観察眼と、私は、茶の湯も含めて、喫茶の場は、「市中の山居」と言いたいのです。

 それ故に、オタピー茶の湯としては、喫茶の場が「市中の山居」感を持つことを必要条件としています。

 「市中の山居」と言う表現には、西行法師的な隠遁の庵とは異なった意味が込められています。

 人里離れた隠遁の場ではなく、日常茶飯の個人的及び仕事も含めた社会的な生活環境の場に在っての表現として、「市中の山居」があるのです。

 つまりは、日常茶飯の社会生活をしながら、「市中の山居」で、「隠遁の庵」の境地に入ることが出来るのです。

 「市中の山居」で、オタピー茶の湯的喫茶、茶の湯の所作に勤しみながら「俯瞰思考」に誘導されていくのです。

 その場が、「主客同坐」であれ、「独坐観念」感を持って、「俯瞰思考」に基づく「直心の会話」が楽しめたら、最高のオタピー茶の湯の在りようとなります。

 六租慧能の禅の境地と共通する心と思います。

 慧能禅師の心は、マサニ、オタピー茶の湯の心に通じているのです。

Friday, May 04, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・4

 俯瞰的思考は、絵巻物に始まり、我が国の伝統だと言えます。

 喫茶文化は、まず、嵯峨天皇による漢文化志向、嗜好に始まり、栄西以後の鎌倉を経て、室町期になると次第に和文化の独自性が発揮されだしたと思います。

 南北朝の混乱を治めた室町幕府三代将軍・足利義満は、時を同じくして始まった明との貿易によって、今日の茶の湯の名物や美術品のコレクションを行っていますが、和の文化の創生者でもあります。
 
義満はPOP-Kitsch-サブカルチャーと言える和文化をハイカルチャーに高めています。

 身分的に低かった人達の申楽を能楽として、今日の日本を代表する文化に育成しています。

 世阿弥の優れた感性を育て上げ、歴史上の人物としました。

 その世阿弥は「風姿花伝」を始めとしてシェィクスピアより早い芸術論や戯曲を書き上げています。

 平安期の紫式部の長編小説「源氏物語」と共に、世阿弥の芸術論「風姿花伝」は、世界で最初の文化なのです。

 これまた世界で始めての源氏物語絵巻は、俯瞰的鳥瞰図となっています。

 一方の有名な世阿弥の芸論「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」は、斉藤孝が「声に出して読みたい日本語」に記していますように、「ただ演技をするのではなく、演技している自分を離れたところから見つめるもう一人の自分を意識のなかにもつこと」、世阿弥の言葉を借りれば「離見の見」が必要なのです。

 つまりは、「俯瞰思考」が求められているのです。

 「俯瞰思考」は、和歌、連歌を取り込んで発展した日常茶飯の生活文化・茶の湯にあっても引き継がれています。

 POP-Kitschーサブカルチャーとハイカルチャーとの界を紛らかす文化は、「俯瞰思考」が必要条件となると判ります。

Thursday, May 03, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・3

 オタピー茶の湯がキーワードとする「ハイカルチャーとPOP-Kitschーサブカルチャーとの界を紛らかす」にあたって、次のような基本思考があります。

 「志」、「創意」、「俯瞰」を基本として、「負の思想」、「マイナス思考」をします。

 「負の思想」、「マイナス思考」は、日常茶飯にあって、表に現れた表面的なことに囚われることなく、その背景にある普遍性に通じた物事を大切にするのです。

 「負の思考」、「マイナス思考」は、赤瀬川原平の「芸術原論」、「千利休 無言の前衛」に、「普遍性」思考は、谷川徹三の「日本人のこころ」にあります。

 「俯瞰」的な見方、思考は、日本の伝統思考だと思います。

 平安末期から鎌倉期にかけての絵巻物から俯瞰図を基本とします。

 同時代に始まるマンガ、アニメの元祖・鳥獣戯画では俯瞰的というよりは、「負の思想」で描かれ、必要最小限の運筆線描となっています。

 つまりは、既成概念に囚われることなく、普遍性に通じた創意と志を高く持って日常茶飯を過ごし、俯瞰的な客観化視点を忘れず、自己反省も忘れないのです。

Wednesday, May 02, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・2

 侘び茶の始まりは、村田珠光による古市播磨法師に送った手紙「心の文」にある「和漢の界を紛らかす」からと言われます。

 私の「ハイカルチャーとPOP-Kitschーサブカルチャーの界を紛らかす」の源泉とする心です。

 古市播磨は、奈良地域の豪族の一門で、林間茶の湯と呼ばれる一族や仲間内が集まって宴会的なモテナシとして楽しんでいたグループの人です。

 当時は、既存の唐物尊重から、和物の価値観を認識し始めた時代といえます。

 能の金春禅竹を始めとした人達によって、備前焼などの和の焼き物への評価を認識し始めたのです。

 当時、連歌や和歌の世界との紛らかしが、和漢の世界との紛らかしを促進させたと言えます。

 その代表が、連歌、和歌を導入した武野紹鷗です。

 侘びに続く寂びの心も加わったと言えます。

 そして、茶の湯の完成者として、千利休の登場となったのです。

 利休は、渡来した南蛮文化、キリスト文化での様式を茶の湯の所作、様式に導入しています。

 つまり、「和漢洋の界を紛らかし」を行ったのです。

 その茶の湯の原型は、元禄時代に始まり、今日に続く家元制によって維持、継続、保存されたと言ってよいでしょう。

 以上より、茶の湯文化が如何に進展する社会、文化を取り入れながら発展してきたかが判ります。

 今日的なグローバル文化社会にあっては、グローカル文化は、「多様な文化との界の紛らかし」となる必然性があります。

 取り分け、茶の湯文化は、日常茶飯の生活文化ですから、「ハイカルチャーとPOP-Kitschーサブカルチャーとの界を紛らかす」ことが大切だとなります。

Tuesday, May 01, 2007

オタピー茶の湯(OTAPYCYANOYU)・・1

 茶の湯文化は、本来、日常的な生活様式を美的、哲学的、芸術的、科学的に取り入れた総合文化として昇華を見たものだと思います。

 喫茶文化は、中国・唐の文化として遣唐使たちによって持ち込まれ、平安朝の嵯峨天皇の時代に繁栄を見たのですが、その後、我が国では、鎌倉末期に栄西が宋から抹茶が持ち込まれたことによって、新しい展開を見ました。

 禅宗や仏教との関係として、修行としての振る舞いに取り込まれ、庶民への健康性や栄養性をもった施茶、一服一銭としての喫茶が商売としての一面も持って発展をしました。

 しかし、鎌倉から室町幕府に変転する時代に、バサラ大名の佐々木道誉を代表に美術的、習俗的取り込みが成されたといえます。

 それ故に、足利尊氏は「武家諸法度」で、茶の湯の集まりを禁止しています。

 室町時代になると将軍様たちが中国貿易としての付加価値のついた美術品や工芸品を輸入して、御殿で喫茶文化を美術品鑑賞と絡ませて発展させたと言えます。

 足利義政が東山文化として、今日のグローカル性ある日本文化の源泉と言って良い発展の礎を追及したと私は思います。

 しかし、応仁の乱によって、世は乱れましたが、一休宗純ら知識、教養人が地方に散って、新しい文化の芽となったと言えます。

 今日の京田辺にある一休寺と呼ばれる酬恩庵が文化サロンとしての代表で、今日的に言えば、文化創造の地であったと思います。

 侘びの茶も、そのサロンに参加していたであろう村田珠光に始まるのです。

 ここまでの概観によっても、如何に茶の湯が、ハイカルチャーとPOP-Kitschーサブカルチャーとの界を紛らかしながら発展してきたかが判ります。